便秘症とは?症状の特徴・治療方法について解説|港北肛門クリニック
はっきりとした定義はありませんが、一般的には3日以上排便がない場合を便秘とします。しかし、毎日排便があっても、食べてから便として出るまでに日数のかかる場合は"かくれた便秘"と言うことができます。
排便は毎日なかったとしても、定期的であれ不規則であれ、出ていて普段の生活に影響がなければ何も問題ありません。むしろ毎日出さないと気がすまないなど、気にしすぎることが問題です。
一口に便秘と言ってもいろいろタイプがあり、大きくは3つに分類されます。それぞれに、治療やご指導の仕方が違います。
基本は、体質であることを理解し上手に付き合うこと、できるだけ焦らず大らかな気持ちで向き合うこと、すっきり感を求めすぎないことは大切です。
いろいろな薬は出ていますが、薬だけに頼らず、食事や運動など普段の生活習慣を見直すことも必要です。
1)弛緩性便秘
最も一般的な便秘で、腸の蠕動運動弱いために起こる便秘です。一週間以上、排便がないという場合もあります。ただ、たとえ排便が一週間に一度でも、きちっと排便があり生活に影響がなければ、ご自分の体質ということで問題ないです。
排便は毎日でなければならないと、強い下剤などを用いてしまい、どんどん強い下剤を使わないと排便できなくなるような状態に陥ってしまうケースは珍しくないです。
下剤の使い方には十分に注意が必要です。
2)痙攣性便秘
腸の緊張が強いために起きる便秘で、兎糞(ウサギのコロコロ便)状の便が出て、すっきりしないタイプです。
過敏性腸症候群の便秘型に当たります。
3)直腸性便秘
便が直腸まで来ているのに出せないタイプです。
排便を我慢したり、肛門が狭いあるいは痛いなどで便を出し切れない時に、直腸に便がたまって出ない状態です。
治療について
食事と薬、排便習慣をつける訓練、適度な運動などにより治療します。
1)弛緩性便秘では、食事、排便習慣をつける訓練や運動でだめなら薬を使うことになります。
まず、食物繊維(特に不溶性を多めに)を中心に、食事を多めにとることを心がけ、積極的に水分、油分、コーヒー、アルコール、乳製品などを摂取するようにします。生活習慣病などで、油分は敬遠されてしまいますが、オリーブ油などを多めに摂取すると排便は促されます。
朝起き抜けに冷水や冷たい牛乳などを一気に飲んだり、コーヒーを1日に3杯以上飲んだりして腸を刺激するようにします。
本などをトイレに持ち込み長く座り、息まずに、出るのを待ち、習慣づけるのも一つの方法です。また散歩など適度な運動も効果があります。
それでも、排便がない場合には薬を使う必要があります。
薬は非常に多くのものが出されています。塩類下剤(酸化マグネシウムなど)、膨張性下剤(バルコーゼなど)、糖類下剤(ラクツロース)、刺激性下剤(センナ・ダイオウ系、ラキソベロン、漢方薬)などがよく用いられます。センナ・ダイオウ系の薬剤、漢方薬は、他の薬剤と比較すると非常によく効きますが、習慣性があります。
便秘の状態や薬の効き方をみて、調整する必要がありますが、基本的には強く使わないようにすることが最も大切です。
まだあまり下剤を使っていない方には、酸化マグネシウムなどの便を柔らかくする緩下剤から始め、効きすぎないように注意しながら、調整していきます。
センナ・ダイオウ系の薬剤や漢方薬などを長く使用すると、他の薬剤の効きが悪くなります。使用する場合は、自己判断で増やしていくのではなく、医師と相談するか必要最低限の量を使用し、下剤を増やさない努力をすることも大切です。
非常によく使われる市販薬コーラック(ビサコジル)は、非常に強い刺激性下剤です。効きすぎた場合は、下痢が続き、便できった後も便意が続くケースがみられます。私たちが処方する医薬品では、同じ成分の内服薬はなく、坐薬しかありません。ご使用になる場合は、少な目に使用していただきますようにお願いいたします。
最近、アミティーザという新しい便秘薬が出されました。小腸粘膜に作用し、便の水分量を増やす薬です。安全で、習慣性もないといわれており、今までになかった新しい便秘薬として効果が期待されています。ただ、妊娠中は使えません。
2)痙攣性便秘は上記の過敏性腸症候群の便秘型に当たりますので、そちらを参照して下さい。
3)直腸性便秘は、便が肛門近くまで来ているわけですから、それを取り除く必要があります。
坐薬や浣腸を用い、指でかき出す(摘便する)こともあります。もし肛門に原因があるならそれを治療します。
弛緩性便秘と同様に治療し、腸を刺激し腸蠕動を亢進させる必要があります。頻回に便意を促す坐薬や浣腸するのは習慣性になり、直腸性の便秘を悪化させてしまう可能性がありお勧めできません。
高齢者では、力むのに必要な腹筋も弱くなり、このタイプの便になりやすいです。高齢者の方は、坐薬や浣腸もやむを得ないかもしれませんが、それに頼りすぎると、自力では出せなくなってしまうこともあり、できるだけ下剤の内服で便を出すようにしていただきたいと思います。
女性で直腸瘤が悪化した場合にも、このタイプの便秘になります。下剤や排便指導でもよくならなければ、直腸瘤の治療を行う必要があります。